児童相談所は子どもを守る最後の砦か(8/8)

2018年1月26日

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ところが実際には、前にご紹介した高校生の女の子のようなことが起きています。

そしてそれは、びっくりするほどのレアケースでも無いようです。ここ1年あまりの間に子どもの権利のための国連NGO・DCI日本のオンブズマンには、「児相が子どもを連れて行ってしまい、会わせてもらえない」という相談が6件ほど寄せられています。

相談者のひとりであるある母親は、神奈川県内の児相により、2010年に4歳(当時)だった長女と引き離されました。

元夫からのDVが原因で抑うつ的になっていたため精神薬を多用し、その影響で死にたい気持ちが増すなどの症状があったことを受け、精神科医が「子どもの世話ができる状態ではない」と判断したことが、引き離された理由でした。

面会わずか1度

その後、この母親は自力で減薬して症状を乗り越えましたが、児相は「母子家庭で経済的に不安定」「長女の具合が悪い」と面会すらこばみました。そして母親が子どもを引き取るために就職し、再婚すると、「養父は虐待するもの」「偽装結婚」などと言い出したというのです。
分離された後、面会できたのは分離から1年半後のわずか1回、それも5分程度でした。

幼くして引き離された長女は、母親と認識できず、面会中の表情は硬く、一言も声を発しない緘黙状態だったと言います。一緒に暮らしていたときは、年相応の発達を遂げ、おむつも外れていたのに、小学校3年生の今も外出時にはおむつが必要で、「感情の起伏が激しいのは発達障害」と、投薬治療も勧められたそうです。

安全基地の喪失は負の影響を及ぼす

子どもの権利条約の理念に立てば、たとえ虐待する親だったとしても、そこから子どもを引き離せばよいということにはなりません。

もちろん、一時的には引き離さねばならない危機的なケースがあるのは承知しています。しかし、たとえそうしたケースであっても、その親子、とくに子どもにとって最も理想的な再統合というかたちをさぐり、それに向けての援助が不可欠なはずです。

親という安全基地を持てないまま成長すれば、その負の影響が子どもの人生や人格に大きな影を落とします。ときに発達障害とも思える症状を呈することがあるという事実は、子ども福祉や心理の世界で働いていれば、今や常識です。

児相が本当にすべきこと

児相がすべきことは、ただ親から子どもを取り上げるのではなく、まず虐待の事実を証拠によって認定し、子どもの安全を確保したうえで、親がきちんと子どもを育てられるよう、個々の事情やニーズに応じた細やかな対話と支援を行うことです。

その努力をせず、権限を振りかざして親子を断絶し、保身に走って過ちを隠蔽するようなことは、子どもの福祉を最優先すべき児相が、その役割を放棄したと言わざるを得ません。