歴史は心的外傷を繰り返し忘れてきた(4/8)

2018年1月31日

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このKくんの事件後、「いじめ撲滅キャンペーン」が再燃したのは「生まれかわったらディープインパクトの子どもで最強になりたい」との言葉を残して福岡県筑前町の中学2年生の男子生徒(13歳)が自殺した2006年でした。

今回と同様、そのときもこの男子生徒の自殺を受け、その前後に起きていたいじめ自殺についても大きく報道されました。

そして、こうした動きに触発されたように、いじめを苦にしての自殺を予告する手紙が東京都豊島区の消印で届くと、伊吹文明文部科学大臣(当時)や東京都教育委員会の中村正彦教育長(当時)も、アピール等を出し、「決して死なないように」と励ましました。
アピールの詳しい内容を知りたい方は、「いじめ自殺(1)~(3)」の回を読んでください。

命を賭けたメッセージなのに

こうやって何年かに一度、いじめ自殺は大きく取りざたされるものの、いじめが無くなることはありませんでした。

インターネットや携帯電話の普及によって「学校裏サイト」を使うなど、仮想世界でのいじめが増え、実態が分かりにくくなってはいきましたが、教員の方々に尋ねると「実感としていじめは増えている」と答える方が大多数でした。

つまり、ここ数十年の間に繰り返されてきた「いじめ撲滅キャンペーン」はなんら功を奏することはなく、いじめは水面下で着実に増えていったということです。

非常に残念かつ申しわけないことですが、私たちおとなは、Kくんをはじめとするいじめられた子どもたちが、命を賭けて訴えたメッセージをきちんと受け止め、それを活かした対策を取ることはできていなかったわけです。

同じ轍を踏みそうな予感

また今回も、同じ轍を踏みそうな予感がします。

報道を見る限り、大津いじめ事件に対する社会(おとな)の関心は、学校や教育委員会の隠蔽体質や無責任体制や加害者の責任追及、学校現場への政治・警察の介入の必要性に向けられています。
過去のいじめ自殺事件のときと同じです。

平野博文文部科学大臣は、「文部科学省が直接調査することもあり得る」として政治主導で取り組む方針を明らかにしました。大津市長の発言を皮切りに「教育委員会制度の抜本的見直し」が叫ばれ、警察と連携していじめを「犯罪」として取り締まり、いじめっ子には罰を与えるべきだという意見が正論として大手を振っています。(続く…