昇華された“怒り”(6/6)

2019年3月14日

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怒り”とは「他者との関係の維持を求める欲求」

朔さんの“怒り”が、何に対する、だれに向けた“怒り”なのかは分かりません。本人がけして口にしないからです。
でも、たったひとつだけ分かることがあります。朔さんのなかの“怒り”は少しずつ変化してきているということです。
近年の作品には、初期の作品にあった重さがありません。古い作品から順を追って見ていくと、破壊的な雰囲気がじょじょに消え、優しい、包み込むような印象が強まっていきます。
作品全体の色彩は鮮やかになり、瑞々しさが増しています。スピード感ある線のリズムは生命力に満ち、ほとばしるポジティブなエネルギーを感じさせます。

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“怒り”はとても大切な感情です。
私たちが自分の身を守るために無くてはならないものですし、“怒り”にむりやりフタをしようとすればうつにもなります。
IFF相談室顧問の斎藤学は“怒り”についてこんなふうに述べています。

「“怒り”というのは、人間にとって大事な感情です。母親がいなくなると赤ん坊は泣きますが、あれは赤ん坊の“怒り”。“怒り”は他者との関係の維持を求める欲求であり、相手に自分の“必要”さを伝える道具でもあるのです」(『週刊金曜日』2005年5月13日号)

それでも必要なものが得られなかった場合、“怒り”は“憎しみ”や“恨み”、“あきらめ”へと変化し、破壊的な様相を帯びていきます。

しかし、もう半世紀近く“怒り”を表している朔さんの絵には“憎しみ”も“恨み”も“あきらめ”も感じません。
“怒り”は見事に昇華され、破壊とは対照的なところにある命あふれる創造の世界を造り上げています

朔さんの怒り(=他者との関係の維持を求める欲求)を昇華させたもの・・・。それは何だったのでしょうか。
帰り際、私を送り出してくれる朔さんを暖かく見つめる「S.A.K.U. PROJECT」の眼差しの中に、その答えを見つけた気がしました。

朔さんの作品は2007年3月19〜30日、東京・日本橋のDIC COLOR SQUARE「迷走する色彩〜hue-meditation〜」で見ることができます。ぜひ足を運んでみてください(HP)。