「教育の原点」を取り戻すために(2/3)

2018年2月5日

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image061228.jpg「改正」の明確な理由もなく

しかし、そこまで急いで「改正」しなければならない明確な理由は何も示されていません。参議院・教育基本法改正特別委員会で参考人に立った知人に聞いても、「公の理由は『国際社会の変化に合わせるため』だけ」とのことでした。

「国際社会の変化に合わせるため」に何を行うつもりでいるのかについては前回までの「教育基本法『改正』で子どもは育つか?」で述べました。端的に言えば、「分に応じて国や社会に役立つ人間の人材育成」です。
このような意図は「改正」法の中に明記はされていません。でも、それは教育改革国民会議(2000年)から続く、「21世紀教育新生プラン」(2001年)、「人間力戦略ビジョン」(2002年)、「中央教育審議会答申」(2003年)など、「大競争時代を打ち勝つ」として次々と出された提言などを見れば一目瞭然です。

そして、その先に競争の激化と規律・統制によるストレスの増大、子どもの序列化、そして人間関係の崩壊が待っていることも、「改正」先取りの教育改革を行っている自治体の現状から疑念の余地がありません。

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「改正」法成立と同じ日、文部科学省は絶妙のタイミングで「改正」を先取りした教育「改革」の影響の一端を発表しました。文部科学省の調査によると、2005年度に病気休職をした公立小中高の教職員は7000人を超えました(前年比709人増)。そのうち、うつ病などの精神疾患で休職したのは、前年度比619人増の4178人で過去最多です。10年間で約3倍に急増したそうです。

責任重大なマスコミ

多くの問題をはらんだ「改正」法とその審議でしたが、子ども問題に関心がある人にでさえ、その問題点を理解してもらうことほとんどできませんでした。多くの国民は「自分とは関係のないこと」と感じ、多くの保護者は「問題を起こさない子どもを育てるには規律ある教育の方が望ましいのでは?」と考え、多くの子どもは蚊帳の外に置かれたままでした。

そこには分かりやすく問題点を伝えることができず、保護者や子どもたちの視点を忘れていた反対する側の責任もあります。しかし、何よりも責任重大なのはマスコミでしょう。
「改正」に関する一連の問題を早くから、鋭い視点で掘り下げた記事を掲載した大手新聞は『東京新聞』くらいです。日本のジャーナリズムを代表すると言われる大手新聞などは、自らのグループ会社がタウンミーティングを取り仕切ったためなのか、当たり障りのない記事ばかりという印象を否めませんでした。

多くの人に影響力を持つテレビは、「改正」間際になってもアジア大会の報道に忙しくて教育の根幹に関わる法律をじっくり検証する暇はありませんでした。
参議院の特別委員会で強行採決された日の夜も、トップニュースは松坂大輔投手が61億円でレッドソックスと正式契約をしたことでした。

大手マスコミは、「『改正』の焦点はイデオロギー(愛国心)問題である」かのような報道をギリギリまで行ない、本当の問題点を曇らせてしまいました。
実は、愛国心を盛り込むかどうかなど、どうでもいいことなのです。「改正」案の教育行政(16条)と教育振興計画(17条・18条)があれば、国はやりたいように教育を操作することができます。つまり政府が「戦争をはじめよう」と思えば兵士づくりのための教育が、「国際競争で負けない優秀な人材を育てよう」と思えば子どもを選別する教育ができてしまうのです。

メジャーなテレビ局が「改正」問題を大きく取り上げたのは参議院本会議で可決された後です。15日の夜、NHKは伊吹文科相をスタジオに招き、「改正」を宣伝する番組を放送しました。また、反対のスタンスを取ったある民法のキャスターは「圧倒的な数の論理を使って“われわれの知らない間”にこんな重要な法案が通ってしまった」と、吠えていました。(続く…